ペットボトルをたくさん倒そう!(「京しみず」でのチームケア)😆 令和6年4月に、介護報酬の改定が行われました。主に4つの視点が示されていますが、いずれにおいても少子高齢化が進む将来を見据えての内容となっています。その内の一つに「認知症高齢者を支える為の取り組み強化」が挙がっており、地域で暮らす高齢者を支えることを一つの使命とする我々介護老人保健施設の職員も、より一層奮起していくべき内容となっています。 ここで、介護老人保健施設の中で「認知症専門棟」と呼ばれるものを持つ施設があることはご存知でしょうか? 認知症専門棟は、認知症の方に特化したサービスを提供する施設の一部です。 今回はこの「認知症専門棟」について、(1)どのような方が入所対象となるのか、(2)入所により期待できること について簡単にご紹介したいと思います。 (1)どのような方が入所対象となる? 介護老人保健施設では、一般的に施設内フロアを「一般棟」、「認知症専門棟」などの呼び方で分け、認知症専門棟では認知症の症状が強く出ている方を中心に支援します。認知症の方全てが認知症専門棟へ入所されるわけではなく、特に認知症がもとで生じる知覚、思考内容、気分または⾏動の障害による症状(以下、BPSD)や介護にかかる度合いをもとに、一般棟と認知症専門棟のどちらが適切なのか施設で判断します。 認知症専門棟へ入所となるかどうかの基準は、一般的に以下の通りです。 <認知症高齢者の日常生活自立度(厚生労働省)> ・着替え、食事、排便、排尿が上手にできない、時間がかかる ・やたらに物を口に入れる、物を拾い集める ・徘徊、失禁、大声、奇声を上げる、火の不始末、不潔行為、性的異常行為 等 日中を中心に上記の状態が見られる場合は「Ⅲa」、夜間を中心に上記の状態が見られる場合は「Ⅲb」、頻繁に上記の状態が見られる場合は「Ⅳ」と言い、いずれの場合も認知症専門棟対象となりえます。尚、上記の状態に当てはまらない場合は、一般棟が適切となることが多いです。 このように認知症専門棟は、認知症の中核症状(記憶が続かない、物の名前がわからない、以前できていたことができない、上手く言葉が出てこない、複数のことが同時に行えない等)に加え、BPSDがみられている方が入所できます。 〇このような状況でお困りの方 ◎排泄の失敗が増え、自分で処理することができない。便器や服、床を汚してしまう。 ◎目を離すと家から出ていってしまい、自分で帰ってくることができない。 ◎近所の方に迷惑のかかる行為をしてしまう(勝手に近所の方の敷地へ入る、ポストから新聞をとってくる、〇〇が盗んだに違いない等の発言、思い込みから他者に怒鳴る等の行動 など) ・上記の状態等により介護負担が増え、生活に限界を感じている方。一定期間入所して生活支援・リハビリを受けながら在宅生活を継続していきたい方 ・認知症の状態にある方を支える介護者が、何らかの理由で在宅介護ができなくなる等、緊急対応が必要な方 等々 全国的にみて、特に「認知症状の進行」「排泄面での失敗」の2点により、在宅生活が難しく感じているご家族が多いという統計が出ています。上記の内容等でお困りの方は、ご家族だけで悩まず、施設や介護支援専門員(ケアマネジャー)、お近くの地域包括支援センターに相談してみてください。 (2)入所により期待できること ・認知症に対する専門的知識を持った専門職が常駐している為、認知症の方向けの適切な支援が受けられる。 ・BPSDの軽減が図れ、在宅復帰後の介護負担が少なくなるケースがある。 ・医師が日中常駐している為、病態に応じた適切な薬物療法を受けられる。医師が専門病院への受診が必要と判断した場合、施設から受診可能な場合がある。 ・入所期間中、在宅介護者の負担軽減が図れる。 等々 当施設「京しみず」の場合、認知症介護指導者養成研修・認知症介護実践リーダー研修・認知症介護実践者研修の修了者や認知症ケア専門士等を複数配置し、BPSDの軽減に向けて医師、看護師、介護福祉士、管理栄養士、作業療法士等によるチームケアを行っています。 その他の特色として、リハビリテーション専門職による個別リハビリ(認知症短期集中リハビリテーション)はもちろん、リハビリ職と介護職で協働し、ご利用者の身体・認知症の状態にあわせて小集団グループを作り、ご利用者全員が漏れなく活動に参加できる工夫と活動機会の確保(小集団リハビリ・レクリエーション:和“なごみ”倶楽部と命名)を行っています。 このような「ご利用者同士の交流が促され笑いの起こるもの、また無理のない難易度設定で楽しめる集団レクリエーションはBPSD軽減に有効である」とする報告が出ています。取り組み開始から約7年間、日々アップデートしながら継続しています。 「介護老人保健施設 京しみず」での活動の様子 みんなでひなまつりの貼り絵を作成! ハンドマッサージで血行促進&拘縮予防! ボーリングダーツで高得点を狙え! ペットボトルをたくさん倒そう! 認知症専門棟の有無、認知症専門棟での認知症ケアへの取り組み状況、保有資格等も確認されると良いと思います。 参考 ・高齢社会白書(令和5年度版 内閣府) ・全国の在宅介護実態調査データの集計・分析結果(令和5年 三菱UFJリサーチ&コンサルティング) ・集団レクリエーション介入が認知症高齢者における行動・心理症状(BPSD)およびQOLに及ぼす効果(坂本将徳、他 2017) ・BPSDの軽減に資するケアの基本的考え方とケアの取り組みプロセス(令和4年 認知症介護研究・研修東京センター) 介護老人保健施設 京しみず |