透析をされている入所者の食事療法(介護老人保健施設洛和ヴィラアエルの場合)🍞 当施設では、慢性腎不全のため透析治療を受けている入所者を受け入れています。食事療法は日々の体調管理に必要です。透析を受けている方向けに当施設で提供しているお食事について、ポイントを簡単にご説明いたします。 1.エネルギー・たんぱく質を適切に摂る エネルギー・たんぱく質が不足すると今まで体の中に貯蔵されていた脂肪や筋肉がエネルギーとして使われます。その結果、体力・免疫力の低下、貧血、食欲不振などを招きます。 また、体のたんぱく質が分解されてしまうと体の中の老廃物が多くなってしまいます。同様にたんぱく質を多く摂り過ぎると体の中に老廃物が残り、腎臓への負担が大きくなります。エネルギー・たんぱく質は過剰になると腎臓への負担が増加します。また、体重増加により心臓や血管に負担がかかることが懸念されます。 しかし、不足すると筋肉量減少、それに伴う活動量低下や嚥下機能低下、ADL低下、腎臓への負担増加、さらなる食欲低下など、入所者の生活に及ぼす影響は大きいものとなります。 よって、エネルギーをしっかりと摂取し、適切な量のたんぱく質を摂る必要があります。 食事摂取量が少ない入所者には高エネルギー・高たんぱく質の栄養補助食品を提供し、栄養量が確保できるようにしています。 2.水分を制限する 水分制限について、透析患者は尿量がほとんど無くなってしまうため、体内に水分が溜まり、心臓や血管に大きな負担をかけます。また、むくみの原因や血圧の上昇にもつながります。 食事中の水分の工夫としては、汁物の提供は週に2回程度、カレーやシチューなどの水分の多いメニューは透析治療の間隔が空く日曜日にはなるべく提供しないなどで対応しています。 飲み物については、毎食のお茶やおやつのコーヒーなどは計量カップで量って提供しています。どうしても喉が渇く入所者には氷を舐めてもらうなどで対応しています。 3.塩分を制限する 塩分制限について、透析患者は食塩に含まれるナトリウムの尿への排泄が激減してしまいます。そのため、1日の塩分摂取量は6g未満とされています。 当施設では透析食の塩分を1日5gとしています。 朝食に無塩パンを使用し、おかずの味付けに食塩を多く使用できるようにしています。汁物は週に2回と回数を決め、献立には酢の物など酸味や香味野菜を使用し、味や献立にメリハリをつけるよう心掛けています。 4.カリウムを制限する カリウム制限について、カリウムは筋肉の収縮を調整したり、ナトリウムの排泄を促進することで血圧の上昇を抑制したりしています。 腎機能悪化により余分なカリウムを尿中に排出することができなくなって高カリウム血症になり不整脈が引き起こされます。食品中のたんぱく質量とカリウム量は相関関係にあるため、たんぱく質を制限するとカリウムの制限にもなります。 ただし、たんぱく質が少なくてもカリウムを多く含む食品はあります。特にカリウムの多いバナナ・メロン・キウイなどの生果物、ドライフルーツ、芋類、海草、干物や切り干し大根などの乾物には注意が必要です。生果物の場合、当施設では1日に50g程度を目安に提供をしています。 5.リンを制限する リンの制限について、リンは骨格の形成、エネルギー代謝に関与します。腎機能が低下すると血液中にリンが蓄積します。高リン血症になると関節や血管に石灰化が起こり、心筋梗塞や脳梗塞などが起こる危険性があります。 リンもたんぱく質の多い食品に多く含まれています。従って、たんぱく質を制限すれば自然とリンの制限にも繋がります。 たんぱく質の摂取量が制限内であっても、リンの含有量の多い加工食品やインスタント食品の摂取が多いとリンの過剰につながってしまいます。また、お菓子などを多く食べてしまうとリンの摂取量は増えてしまいます。摂取する頻度を減らすことでリンの摂取を減らすことができます。 |